縁と円。

昔、こんな先輩がいた。

建築の先輩で
すごく僕のことを可愛がってくれて
色々世話を焼いてくれたり
いろんなお話もしてくれた。
親身になってくれた。

ある日。
ランチを食べに行った。
先輩がご馳走をしてくれた。

　「また御礼します。」

と当たり前に口をついた。

すると。
その先輩に怒られた。

　「そんな事するな」と。

先輩は

　「俺がお前の頃くらいだった頃、
　　同じように俺も先輩に可愛がってもらった。
　　俺のしたことが少なからず『ありがたいな』と思ったんなら
　　今度はお前が俺の立場になったときに
　　お前が後輩達に同じことをしてやれ。
　　世の中はそうやって回ってんだ。」

と。

ある日、建築の仲間が来訪した。

僕のとても苦手な部分が、とても上手な人。
恥を忍ばず正直に相談したら
その人はニッコリと笑い

　「本当は同業者には教えないんだけど
　　野田さんには教えてあげる。
　　タダでいいよ。
　　お子さんの事もあるだろうから
　　自宅まで出張してあげる。」

本当に本当に嬉しかったから
　
　「いつか何らかの形で御礼します」

と言ったら

　「そんなの要らない。
　　それより
　　野田さんの周りにいる方々へ
　　そのお気持ちを振りまいて。」

と。

僕は周りに生かされている。
とても上質な仲間に。

自惚れ、なんて小っちゃいね。
何が小さいかって、底が浅い。
ここぞという時のパワーが無い。
だって結局は自分だけのコダワリだから
自分の心が折れたらそれでオシマイ。

誰かの為に生きる。
誰かの為に張れる命がある。
誰かの為に生きられる、という人生を与えられている。

誰かを思うエネルギーって強いね。
折れた背骨をシャンとしてくれる。

いくつか失った恋や夢がある。
それでもアイツが元気でいてくれるなら。

それさえあれば、いいね。

そう思える俺って
やっぱり幸せなんだ。

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